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【ロッドビルド】終点としてのロッドビルディング

我々、千代田湖オカルト倶楽部はロッドへのコダワリがハンパではありません。(自称)

おっさん双方共、メーカー問わず揃えずのスタイル。

フィッシングショー(現:釣りフェスティバル)、キープキャスト等には、
30年程毎年出向き。開場から閉場時間まで全メーカーの竿を振り続ける事もしばしば・・・

私もコチ氏も「持った瞬間に手に馴染む竿」を求め日々迷走しております。

自分に合ったロッド探し

前述で「持った瞬間に手に馴染む竿」と表現させて頂きましたが、
「手に馴染む」と言う感覚を言語化するのは非常に難しく。

メーカーの忖度、統一性を求めない私達に言及させると、自身に合ったロッドとは、

ひと振りでそのロッドを用いた釣りが全てイメージできるような感覚を持てるロッド。
だと思います。

他メーカーの類似番手のロッドを持っても「アレ以上は無い」と思えるような感覚。
を必ず覚えます。

それでも自分の中で100点満点のロッドを探す(出会う)と言うのはかなり難しく。

リールを着け・ラインを通したらイメージと違った。
魚を掛けたら圧倒的パワー不足だった。等、
実際にフィールドに出て使った結果論として初めて100点満点と言えるからです。

私の場合、過去に100点満点だった竿は
《Fenwick》GWT62SULJ-K.T.F.
《EG》TMJS-64L(マジョーラモデル)
《久遠》DNS-63ML
《EG》TKIC-66MH (トーナメントシリーズ)
《Fenwick》ACES56SLJ

聞いたわけではありませんが、コチ氏は
《EG》TMJC-66MH (マジョーラモデル)
《久遠》DNC701XH
《NORIES》HB640ML
・・・あたりのはず。

こうして洗い出してみると双方共クセ強めな感じもしますが・・・
どれも「過去に(当時は!)100点満点だった」と言うのがミソで、
時代も釣りも変わり、今の時代となっては100点とは程遠いロッドだと思います。

また、どのロッドもひと昔前のラインナップなのは、
千代田湖オカルト倶楽部の釣りが古い・・・とか、
老害インチキ倶楽部・・・って話ではなくw

最新・最近のロッド、ハイエンドクラスの高級ロッドを散々使用したうえで
自分の中で100点満点をとれなかった。と言う意味だと明言しておきます。

第3世代カーボンの登場

私達の中で時代が変わったのは、正直ココからでした。
業界的にもココからだったと認知しております。

TORAYCA®、NANOALLOY®、「T1100G」「M40X」
とか言われているアレですね。

詳しく知りたい方は、
「ロッド 第3世代カーボン」「東レ ナノアロイ」等で調べて見てください。
細かく書いたらコレだけで3記事くらいになってしまうので・・・

釣り業界、各位メーカー様がこのカーボンマテリアルをハイエンドロッドに採用し始めてから、大枠でロッドに対する仕様がかなり変わったと思います。

これこそが「ゲームチェンジャー」だったと言っても過言ではないと思います。

私の所感を具体的に申し上げますと、
「曲がるブランクス素材を曲がらないように設計する思想から、
曲がらないブランクス素材を曲がるように設計する思想に変わった。」

と思います。

それは、カーボンシートを薄巻きにしてもカーボンブランクスの強度が上がったと言う技術証明でもあり=「高強度・高弾性」故に弾性を落とすためにはブランクスの薄巻きにする必要がある(薄巻きにすることができる)=ブランクスを軽くすることができる。

「軽く・強く・高弾性」なロッドを作るための良い循環が生まれると言う訳です。

ココだけ切り取ると、凄くメリットがあるように感じますが。
これによってロッド市場に何が起こったのか。

メーカー忖度・宣伝一切無い、完全ディープユーザー目線で語らわせて頂きます。

高弾性は正義

「弾性率が高ければ良い」 ってもんじゃない。
と我々は個人的主観としてそう思います。

本当はダメだった失敗例を出したいくらいですが・・・
(個人的に聞いてください)
昨今の高弾性ロッドは、
高弾性・薄巻きカーボンが故にブランクス自体が細くなる傾向があると思います。

実際に使用してみると「釣り竿として華奢になった。」と感じる事が多くなりました。

私的にその傾向は、大型の魚を掛けるほど顕著で「弾性率≠復元力」だと思います。

つまり、カーボンとしての弾性率は高いけれど、
魚の負荷が掛かって曲がった(潰れたチューブラーブランクス)が復元する力は、物理的にカーボンシートの巻き量とブランクスの太さ(ブランクスデザイン)に依存するわけで・・・
「高弾性=パワーがあるロッド」と誤解されている方が多いように感じます。

故に「軽く・強く・高弾性」は当たり前の時代が到来。
「多くのメーカーのロッドが大差無く良くなった」と言うのが正直な所感です。

あえて悪しき言い回しをさせて頂くと、
「全部が100点満点中の90点くらい。」と言った感じだと思います。。

残りの10点の内訳は、
8点は製造上の問題で、残りの2点は本当に好みの世界。

「ある程度上位モデルのロッドであれば、どのメーカーのロッド使っても本当に大差ない。」
と言うのがユーザー目線の、メーカー様開発に本気で怒られそうなリアルな所感。

残り8点と表記した「製造上の問題」に関しては、
工業製品なのである程度仕方のないこともありますが。

ロッドブランクスの元々の曲がり・反り。
(恐くて写真載せられませんが結構なメーカーあります。)

ガイドの玉のような過剰コーティング・同じ番手で長さもガイドの位置も違う等・・・
※超大手メーカーのロッドでもコーティング極厚!!

言い出したらキリがありませんが、他にも色々あります。
ぶっちゃけ理由も分かってはいるのですが、ココだけは本当にメーカー様に努力頂きたい。

コスト上がっても、良いモノは買うので!!

ここまでの記事だけ見ると、
第3世代カーボン・高弾性ブランクス の批判記事に感じるかもしれません。

しかし、
「断じて違う!」
と声を大にして言わせて頂きます。

事実、第3世代カーボン・高弾性ブランクスを完璧に使いこなし
素晴らしいロッドデザインをされているメーカー様も多くあります。

私的に《EG》IRSC-610MHRF スーパーレイブンRS は、

素材を適材適所に用いた秀逸至極の1本だと思います。
定価¥ 95,000円(税別)ですが、その価値有り。買えませんが・・・

2025年市場は、
いよいよ最新「M46X」カーボンを採用されるメーカー様が出てきたと思います。

もちろん、凄い技術ではあるんですが。
私が申し上げたいのは「新素材=良いもの」って訳ではなく・・・

「T1100G」「M40X」に比べると、弾性率は高くても引張強度では劣るという事。

つまりは、メーカー様はそれに準じたデザインをされる訳で・・・
我々ユーザーは、それを理解した上で製品を手に取る必要があると思います。

「新素材!!」「M46X」って聞いて、
それがどんな素材で、どんなメリットとデメリットがあるのか。
この記事を見る前に説明できたユーザー様は、どのくらいいるのでしょうか。

更なる新素材の登場で、ある意味ロッドにも多様性が求められる現代。

その素材のロッド、どのデザインのロッドが、
本当に自身の釣りに適しているのか見極めて選択することが必要になったと思います。

 

軽さは正義?

また、私個人的には「ロッドを軽くすること」には極めて貪欲で、
ロッドは軽いに越したことはないと思います。

「軽さ」こそが「感度」に直結しリニアな操作感を生む最重要ファクターであり、
低ストレス・低疲労に繋げる最重要事項であると思います。

しかし「軽さだけではダメ」と言うのが現代ロッド事情でして・・・

※今年の釣りフェスティバルでは、とくにその兆候でした。

ブランクス自体が軽くなればなるほど、ガイド・グリップ・リールシートの重さが際立ってしまい、故にロッド全体でのバランス統率が難しくなってくると思います。

また、そのバランスを突き詰めれば突き詰めるほど、
極めて「レーシング仕様」に近づく傾向があり、
レーシング仕様=そのロッドのデザイナー or または開発に携わったテスターの色が極めて根強いロッドになると思います。

まぁ、そのテスターの釣りを完全にコピーできれば全く問題無いんだと思いますが、
私には至極当然無理な話でして・・・

現代のシビアでタフな釣り環境で釣るには、
その中から自身に合ったロッドと出会う必要が有る。
と言うことだと思います。
※ティップランをやりこんでいる人は、痛い程良く分かるハズ!!

つまりは、「軽さは正義」なのではなく「バランスこそが正義」であって、
ロッドとしての軽さではなく、リールや使用するラインの重さまでを含めて考え、
振り重りや共振もたれしない真の軽さを追求することが必要だと申し上げたい訳です。

 

好みの世界

前述にて、残り2点と表記した「好みの世界」についての話ですが。

昨今の、フラッグシップモデル・ハイエンドモデルのロッドは、
「ロッドとしての性能(軽く・強く・高弾性)を追い求め過ぎて、
操作性・操作感が失われている。」

と私は感じます。

何を持って「ロッドの性能」とするのか賛否ある所だと思いますが、
私的なロッドの性能は「軽さ(感度)・強さ(強度)・硬さ(弾性率)」ありきで、
操作性・操作感はあくまでもアングラーが入力するモノと言う考え方です。

もちろん、全ての釣りにこの考えがマッチする訳ではありません。巻き物に操作性も操作感も関係無い状況もあり・・・

エギングみたいに、高弾性でロッド性能が高レベルな程、モノを言う事もあると思います。

「好み」とは「軽さ(感度)・強さ(強度)・硬さ(弾性率)」のベンチマークではなく
前述した「バランス(総合力)」自身に適しているかだと思います。

「自身の釣りのスタイルとベストマッチするロッド = 持った瞬間に手に馴染むロッド」
であり「強さと硬さ」は「操作性と操作感」と相反するモノだと思うからです。

つまり、「軽いに越したことはない」とは言えど、
持った・振った感想が「軽い」だけでは、まるでお話にならない。と言う訳で。

失われた「操作性と操作感」を入力するアングラー自身が補うには、真なる意味で自身の腕になるロッド。自身のスタイルにマッチしたロッド選びが必要となってくる訳です。


それ故に私は、現代市場の特に上位モデルからは、
私好みのロッドを探す(出会う)事は出来ませんでした。

だいぶ妥協すると、中位モデルの中に好みのモノが見つかることが多い傾向がありますが、中位モデルのロッドの場合、仕様のガイド・グリップが低位ランクのモノであることが多く結果、私の中で100点満点に満たないと言う負のループが発生しています。

事実、市場最も売れるのが中位モデルなのは金額の問題だけではなく、
「万人の好み」と「メーカーのベンチマーク(フラッグシップモデル・ハイエンドモデル)」が不一致してるんじゃないかとも思います。

高性能魚探が売れまくっているように、
多くの男は趣味のモノを高くても無理して買う と思います。

本当に良いモノは。

あるときこんな雑談の流れで
「腕が無いからハイエンドモデルのロッドを使い熟せていないだけだろ?」と
実際言われたこともあるんですが・・・

前述した通り「あくまでも好みの話」なんでね。

 

終点としてのロッドビルディング

ようやくタイトル回収・・・

ロッドビルディングと言った場合、どっからがビルドと定義するのかですが。
多くの場合、既存のロッドを自分の好みにカスタムすることだと思います。

私の場合、現代市場に好みのロッドを探す(出会う)事が出来なかった故に
「既存のロッドを100点に近づける」と言う意味でロッドカスタムがスタートしました。

今の師にロッドリメイクをお願いしたことも。

ただ・・・私は、リメイクを人に依頼したことで
「絶対に自分でやらなきゃダメだ。」と目覚める事になりました。

これは、その時のリメイクがダメだったとか失敗だったとか、そういうことではなく、
結局のところ操作感というのは、個人が持つ「感覚」なので、
それを言語化し依頼するのは困難というか、絶対に不可能だと思うからです。

でもって、本格的に勉強すること2年。


都内の超老舗名店にも足繁く通い。

ようやく自分の思い通りのバランスで
完璧なロッドを仕上げる事ができるようになりました。

好みのブランクスが見つかれば、ブランクス以外のフルビルディングをするまで完全習得。
ソリッド継ぎも人並み以上にできるようになったと思います。


カワハギロッドはフルビルディングで好みのロッド仕上げが功を奏して竿頭!!

しかし、これまた勉強すればするほど極めてディープな世界で・・・
数多の職人様・諸先輩方からしたら、たった2年程度でロッドビルディングを語るな。
をお叱りを受けそうですが。

2年間の勉強のために投資した練習代と実験・運用費用は
ライブスコープフルセットより遥かに高額だった(それだけ本気で勉強した)と提言させて頂きます。

まとめ

それだけ本気で勉強したロッドビルド。ですが・・・
この記事は、ロッドビルディングを推奨・オススメするための記事ではありません。

あくまでも私の中で、自分の理想形を具現化し、
工業製品では出せないクオリティを出せるロッドビルディングは、
「ロッド選びの終点」だったと言うだけで。

閲覧いただきました皆様においては、
ロッド選びを見つめ直す「きっかけ」となれば幸いです。

現代のロッド。
本当にどれも良いものばかりなので、上を求めると悩みは尽きないんでね・・・

 

おま

ルアービルディングに関してもそうですが、
「自作=安上がり」と思われる風潮は何故なのでしょうか・・・

理想形のモノを作ると、既製品より遥かに高額ですのでご参考までに。

私基準ですが、ロッドビルディングに関して。

ブランクス¥15,000~¥40,000
ガイド¥10,000~¥15,000
グリップ¥10,000~¥15,000
その他パーツ~¥5,000~

¥40,000~¥100,000/本 費用がかかります。

※自身のブランクス or 中古ブランクス 見つけてきたとしても、
¥20,000~¥30,000/本 はかかります。

出資したらしただけのモノにはなるんですが・・・

逆を言えば、これ以下の値段に抑えたいのならば、
既製品を購入した方が安く良いモノが手に入ると思いますし、
わざわざ「創造する」意味は無いと思います。

つまり、とても人にオススメできるもんじゃありませんが、
本気で至高のロッドを作りたい人は、断腸の思いでご相談ください。

間違いなく忘れられない魚に出会えるとお約束します。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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